第3回 自然と共に〜道路と建物編〜

 「秘湯」という言葉から皆さんは何を想像されますか?「秘湯」感を表すものは宿によって違っており、それぞれの「秘湯」を目指して旅行者が全国を巡行しています。その中でも私達が所属する「日本秘湯を守る会」の秘湯めぐり会員は50万人とも100万人とも。そんな秘湯歩きに慣れているゲストでさえ滝見屋に到着時、玄関先で最初におっしゃるのが「秘湯過ぎる。」というお言葉です(笑)。

 その言葉の先には、やっと着いた安堵感であったり、興奮気味の表情があったりと、お客様それぞれですが、滝見屋の「秘湯」の特徴は宿周囲の景観はもとよりお客様が宿に到着するまでの道のりとわくわく感(はらハラ感?)も含め商品であることだと最近よく思います。


 駐車場までの、その道のりは昭和43年に市道に組み込まれ現在は米沢市が管理をして下さっています。一件宿だけのための有り難くも心細げに続く道は、元々先祖が作った道で当時は最小限の着工だったため、地形に沿った無駄のない道となっています。母(滝見屋代表)はお嫁に来た頃、この道はジープでしか上りきることができず、粘土質の路面は雨になるとスリップし、よく車のおしりを押しながら進んだものよ、と涼しく申しておりました。

 今も山道であることは変わりませんが、台風や暴風雨の時だけではなく、毎年少しずつ少しずつの手作業に近い整備をして下さっているお陰で常連のお客様には「道がよくなった。」と言って下さる方もいます。とは申しても、全国的にも道の整備はかなり進んでおり、相対的には国道ならぬ酷道かもしれません。毎年少しずつ少しずつの進歩ですが継続されている滝見屋までの道の整備。これはある意味Sustainable development(持続可能な開発)と言えるかもしれません。

 そんな道の先にある滝見屋ですので、平地で何でもないことが滝見屋の立地では非常に手と知恵を使います。建築物も然り。ここ最近の大規模な改装は平成に入ってからですが、重機が入らないこの地での作業はほとんど手作業によるため、建物の柱や露天風呂の石一つ一つにも愛着があります。

 例えば、1本の鉄骨とっても、そのまま運べないので、山のふもとの本宅で鉄骨をわざわざ切断し、それを宿まで運び宿の前で溶接して1本に仕上げる。ミキサー車は入ることができないので、手作業で練りながらの作業する・・・といった風です。勿論、これら作業は私が出来るはずもなく私が生まれる前から宿に携わってくれていた桑島大工さんの号令と市内の職人さん達との連携プレーによりました。職人の中の職人と言える奮闘振りは、まさにプロジェクトX並みです。

                                    ▽毎春、つり橋板取付けに奮闘するスタッフ

 ちなみに源流から最上川上流部に架かる第一番目

の橋グラフィックス4.jpgは滝見屋前に架かるつり橋ですが、こちらの橋も手作業が伴います。晩秋冬のお休みに入るために山を下る時に敷板が外され、翌春は敷板取り付けの作業でシーズンが始まるからです。自給自足の極み、私達のチャレンジの旅はまだまだ続きます・・。    

 

峠から峠に移る旅路かな